脂肪体質と漢方薬
漢方では肥満の原因は食べ過ぎや運動不足のほかに、「体質」にも問題があると考えています。肥満を生む体質とは「脾臓」の働きです。漢方でいう脾臓は、現代医学でいう脾臓とは違い、飲食物を消化吸収するとともに、新陳代謝を促進する働きがあります。胃腸の働きをするだけではなく、体全体のエネルギ一代謝をコントロールする役割を担う大切な臓腑と考えられています。基礎代謝を高めながら「脂肪を燃やす」仕事をしているのです。食べ物を摂りすぎても、脾臓の働きが強く、消化・吸収・代謝がきちんと行われていれば太る心配はありません。スポーツ選手は一般的に普通の人より多く食べますが、それでも肥満の人は見かけません。これは、運動することによって十分な基礎代謝が備わっているからです。
肥満をタイプ別に考える
1.食べすぎ肥満 食べ過ぎで運動不足の状態が続くと、基礎代謝が下がります。すると、余った栄養は代謝されずに体脂肪として溜まり肥満になってしまいます。お腹の周りに皮下脂肪が増えると、腸が圧迫されて便秘を起こしやすくなります。そうなると、便秘に加え、肩こりや頭痛、腰痛などの症状が現われることもあります。 このような症状には「防風通聖散」が適しています。この薬は、清熱作用によって食欲をセーブし、体内の残留物質を汗、尿、便などによって排出。基礎代謝を上げ、脂肪が燃えやすい体内環境を作ります。便秘を改善し、皮下脂肪を落としたい人にお勧めします。
2 むくんだような肥満
「食が細いのに太って見える」「足や顔がむくんで困る」−こんな悩みを持つ女性が、最近急増しています。このような肥満は、胃腸があまり丈夫でない方に起こりやすく、総じて食が細くてむくみやすいことが特徴です。汗をかきやすく、重だるい疲れを訴える人も少なくありません。むくみの原因は、慢性的な水分の摂りすぎによって脾臓の働きが低下し、栄養水が体内に停滞していることにあります。不要な栄養水が体内にあると体は冷え、基礎代謝が低下します。ある調査では体温が1度下がると、基礎代謝は約10%低下するという結果が出ました。そのために、むくみやすくやせにくい体質になってしまうのです。 むくみを伴う肥満には「防已黄耆湯」を用います。この薬は、水分代謝を促進しながらむくみを改善する働きがあり、基礎代謝が上昇するので肥満改善にも結びつきます。
3 ストレスと肥満
ストレスを受けると、食欲をコントロールする満腹中枢が影響を受け、つい食べ過ぎたり、空腹感がなくても食べ物を口に入れないと満足できなくなってしまいます。 このようなイライラ食いをすると、皮膚が固く張ったように見える固太りになりやすいといわれています。イライラ型の肥満には、自律神経の働きを調整して過食を抑える「大柴胡湯」が適しています。ストレスから来る肥満には最適な漢方薬です。
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