「心」の安心は「腸」から作られます
腸の具合が悪い(便秘、食欲不振等、慢性的な腸の不具合)方は精神不安や不眠などの不調を同時に訴えられることが多いものです。消化吸収を担う胃や腸の働きが悪い方は、血や気といった体にとって必要不可欠な循環成分を充分に体に巡らせることができず、自律神経疾患を引き起こすことがあります。ただ、一般的にこういった精神的な疾患に対してどういう対応をとるかと考えた時に、精神安定剤や不眠薬を飲むことが多いと思います。ちょっとわかりにくいかもしれませんが、安定剤や睡眠薬はあくまでも心配事や様々な原因によって働きが過剰になった「脳神経」を安定させ、休めるものであり、当然「腸」のケアになるべきものではないので不安感や不眠などの本質的な原因になっている「心のケア」にはつながり難いもの。逆にこういった薬は腸を荒らすものが多く、長期で続けるほど症状が良くなるどころか悪化していくことになりかねません。
まずは「腸」を整え、充分な栄養を取れば不眠が改善されたり気持ちが落ち着く、ということが起こりえます。そしてそれができるのは腸に元気を与える生薬の集まりである中成薬の長所であるわけで、これらが本当の意味での「安定剤」として活躍できる場面は決して少なくないと思います。
コラム〜腸と心
漢方の考え方の基本に「脾は後天の本」という言葉があって、先天的に問題なくこの世に生まれてきた以上、生きていく上では「脾」=「胃腸」が一番大事ですよという意味です。 人間に限らず、動物は皆、食べ物を食べて生きていけるわけですが、胃腸がちゃんと働かないと栄養の吸収や代謝がうまく機能せず、さまざまな問題がでてきます。 この胃腸の機能に影響を与える因子としては、食べ物そのものの問題のほか、環境の問題やストレスの問題などさまざまな因子がありますが、今回は「こころ」と腸の関係について考えてみたいと思います。漢方では、五臓六腑の関係の中で「心」と「小腸」は裏表の関係になります。漢方で言う「心」の臓は、西洋医学と同じように血液を全身に送り出すポンプ作用の他に、「こころ」即ち、精神神経作用をコントロールする働きがあると考えられています。さて、その「心」と関連の深い「小腸」ですが、近年西洋医学で画期的な発見がされました。それは、腸は脳とは独立して、本能的な情動を発信しており、第2の脳とも言えるというものです。
ストレスが腸管の異常〜下痢や便秘を繰り返す〜と関連性がある事はよく知られていますし、小腸はまた、人間の免疫システムにも深く関与していることも知られています(小腸は胃や大腸に比べて、圧倒的にガンになりにくい)。 特に最近では、腸内細菌バランスを整えると花粉症やアトピーが良くなるとか、免疫力が高まるという事で、乳酸菌の入った飲料やヨーグルトなどがブームになっていますが、腸が単に「腸内細菌のすみか」にとどまらず、もっと高次なものであるとすると、乳酸菌を飲めば良いといった単純な話しでは済まされないような気もします。 |