概 要
●クロウメモドキ科のナツメの果実で糖、粘液質、リンゴ酸、酒石酸などを含みます。強壮、鎮痛、利尿、緩和、筋肉の緊張による疼痛、過敏症、腹痛、咳漱、身痛に用います。
●大棗は大きな棗(ナツメ)"という意味です。その果実は漢方薬の重要な"調整役"の一つとして、異なる成分の薬理作用の衝突を和らげるため、様々な処方箋によく加えられます。
●大棗の色は黒ですが、紅棗は赤です。後者は同様の薬理作用がありますが、血の滋養により効果的であると考えられています。棗は一般に、湯に3から10個加えて服用します。
伝統的薬能
・脾臓と胃の気を強壮にする。
・営気と血を強化する。
・神を鎮める。
・他の生薬の薬理作用を緩和する。
【基原(素材)】…クロウメモドキ科ナツメの果実を乾燥したものです。
※中医学の薬性理論の大きな柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」で、いずれも生薬の効能効果と関連があります。
【薬効】…補脾胃作用 強壮作用 養血安神作用 緩和薬性作用 鎮静作用
【薬理作用】…●胃腸機能の調節作用・鎮痙作用・薬性をやわらげて、味を矯正する。臨床的な観察によると、鎮静・利尿の作用もある。
●大棗にはcyclicAMP 100--500n mol/gが含まれており,アデニールシクラーゼ活性及びフォスフォジアスターゼ活性が認められる。
●緩和,強壮,利尿薬として,筋肉の急迫,牽引痛,知覚過敏を緩和し,咳,煩燥,身体の疼痛,腹痛等に応用する。
脾胃気虚に補助薬として使用する。補気の方剤に入れるときには、必ず生姜と一緒に用いる。生姜の刺激性を大棗で緩和し、大棗によって生じる腹部膨満を生姜で減少させる。大棗と生姜を同時に用いると、食欲が増し・消化が良くなるので、他の補気薬の作用がよくなる。 婦人の臓躁(更年期障害やヒステリーなどに相当する)に用いる。 “甘をもって急を緩める”というように、鎮痙作用を利用する。 薬性を緩和する。作用が激烈な薬物に配合すると、性質をやわらげて消化機能(脾胃)に対する傷害が少なくなる。辛味や苦味の薬物が多い処方にも使用して味を矯正し、薬性をやわらげる。
●強壮、利尿、鎮咳、健胃、鎮痛、鎮痙。
【用 途】…緩和、強壮、利尿薬として、筋肉の急迫、牽引痛、知覚過敏を緩和し、咳、煩燥、身体の疼痛、腹痛等に応用する。
【学 名】…Zizyphus vulgaris lamarck var. inermis Bunge
●日本薬局方
【出典】…神農本草経
【三品分類(中国古代の分類)】… 神農本草経や名医別録などでの生薬分類法
上品(不老長生薬)
生薬生産地
【中国産地】…山東省、河南省、河北省、四川省、貴洲省、陜西省
【日本産地】…大阪の河内、岐阜県古河
【その他産地】…朝鮮
【中国での一般的服用量】…10〜30g
処方と調合
棗は治療薬を調和させるために処方箋に加えられます。
人参(チョウセンニンジン)と配合し。気の調和に使用します。
生姜(ショウガ)と配合し、衛気および営気の不調和、消化吸収の改善に使用します。
甘草(カンゾウ)および浮小麦(コムギエキス)と配合して臓腑のアンバランスに関連するヒステリー症の鎮静に使用します。