糖尿病
糖尿病とはインスリンという血糖値を下げるホルモンの作用が低下することで、血液中のブドウ糖の濃度が上昇する病気です。インスリンの分泌が障害される「インスリン依存型糖尿病(1型糖尿病)」と、インスリンの分泌が減ったり、働きが低下したりする「インスリン非依存型糖尿病(2型糖尿病)」がありますが、多くは2型の糖尿病で、食べすぎ、飲みすぎ、運動不足など生活習慣が関係しています。 糖尿病で恐ろしいのは、初めのうちは自覚症状がないということ、そして放っておくと病状が進行し、「糖尿病の合併症」が起こるということです。合併症は全身のあらゆる臓器に起こりますが、代表的な合併症には、腎症、網膜症、神経障害があり、失明に至ったり、人工透析が必要になったり、壊疽(えそ)が起こって足を切断しければならない場合もあります。また、心筋梗塞・狭心症、脳卒中なども起こりやすくなります。
漢方って糖尿病に何か効果あるの?
現代の糖尿病治療では、食事療法と運動療法、西洋薬の血糖降下薬によって血糖をコントロールすることが基本となります。漢方薬のなかにも血糖値を下げる作用を持つものがありますが、作用が穏やかであり、西洋薬のようにきっちりと血糖をコントロールできるというところまでいきません。むしろ、漢方薬は糖尿病患者の自覚症状(しびれ、疲労感・冷えなど)の改善や、合併症の予防のために補助的に使われています。例えば高齢で疲労感が強い状態には八味地黄丸(はちみじおうがん)、便秘やかゆみには防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)、冷えには牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)などが用いられます。
【漢方薬と糖尿病】 漢方薬を糖尿病治療に使う場合、漢方薬の特性をよく理解して用いる事が大切になります。漢方薬は西洋薬に比べ血糖値を下げる力は強くありません。その代わり低血糖などをおこす危険はありませんし、体調を改善し合併症を予防する効果などは期待できます。以下に漢方薬の糖尿病に対する目安となる使用法を挙げてみます。 【1】糖尿病初期でまだ薬物療法には至らず、検査で血糖値が少し高い程度で食事療法・運動療法を中心に様子をみている段階では、漢方薬はとても有効に使えます。食事療法・運動療法の効果が効率良く発揮され,血糖のコントロールも漢方薬で十分行える事が多いですし、病気の進行や合併症を予防できます。また口渇、多尿、倦怠感、などの不快な症状を取る働きも期待できます。ただし漢方薬だけを飲んでいれば多少暴飲暴食をしても良い、というわけではもちろんありません。 【2】糖尿病中期で、内服の血糖降下剤の薬物療法を行なっている場合は、漢方はこうした西洋薬に併用する形で使うのが基本です。西洋薬と安心して併用できる漢方薬はもちろんありますし、併用する事で糖尿病の進行を抑え西洋薬をどんどん強くしなくてもよい状況に持って行けます。場合によっては症状が回復し、西洋薬の服用を中止できる例もあります。また、動脈硬化や腎臓病、糖尿病性神経障害、糖尿病性白内障などの合併症を予防または治療する働きも期待できます。 【3】糖尿病のタイプでインスリン依存型糖尿病の方や、長く高単位のインスリンを用いているような慢性例の方は、漢方薬では血糖をコントロールできません。私も時にこのタイプの方に漢方薬を飲んでインスリン止めていきたい、という相談を受ける事がありますが、漢方薬では限界があります。ただ、このタイプの糖尿病の方も、血糖値を下げる目的では使えませんが、漢方薬を合併症の予防や体調の維持に使う事には大いに意義があります。そのような観点で漢方薬を選ばれ服用される事をおすすめします。 |