陰茎がんは、痛みを伴わないのが普通です。陰茎がんはまず陰茎の皮膚から発生しますが、進行すると海綿体や尿道にも浸潤)し、排尿が困難になることがあります。がんが大きくなると潰瘍(かいよう)を形成したり、がんがくずれて出血することがあります。
また、陰茎がんは鼠径部(そけいぶ)と呼ばれる大腿のつけ根の部分のリンパ節に転移しやすいので、進行すると鼠径部のリンパ節をかたく触れるようになります。これがさらに大きくなると、リンパの流れが悪くなって、足のむくみが出現することがあります。
陰茎がんの治療の主体は外科療法あるいは、放射線療法です。
■外科療法
手術の適応があるのは、I、II、III期です。手術は全身麻酔をして病変部の切断と、鼠径部のリンパ節を摘除する操作を同時に行います。場合によっては、さらに骨盤部のリンパ節も摘除することがあります。手術後は陰茎が小さくなり排尿が難しくなることがあります。また、そのままでは性交も難しいので、形成外科的な手法で人工的な陰茎を形成する手術を行うこともあります。
・陰茎保存手術
表在性の病変であればレーザーにる治療が可能なこともあります。さらに包皮に限局した小病変であれば包皮環状切除術(包茎に対する手術と同じです)による治療も可能です。
・陰茎部分切断術
陰茎の先端近くにできたがんでは陰茎を途中で切断して治療することがあります。術後、立位での排尿は可能です。
・陰茎全切断術
浸潤がんでは通常陰茎を根部から切断することが必要です。新しい尿道の出口は会陰部に設置されるので排尿は座位で行うことになります。
・鼠径リンパ節郭清
浸潤がんや臨床的にリンパ節転移が疑われる症例では通常鼠径リンパ節を摘除します。術後に下肢浮腫が出現しやすく、弾性ストッキングなどの着用が必要となることがあります。
■放射線療法
放射線療法の対象になるのは、比較的表在性の小さな腫瘍に対して行われます。陰茎の形をある程度保てることが利点ではありますが、治癒する確率は手術に比べると落ちます。ただし、I期では手術と比較し、成績はほとんど変わりません。副作用として、治療後に陰茎の変形や、尿道狭窄などがあります、尿道の狭窄(きょうさく)をきたすことがあります。転移による疼痛などの症状があらわれるため、放射線療法が選択されることがあります。
■化学療法
転移が認められるような陰茎がんは、抗がん剤治療の対象になります。シスプラチン、メソトレキセート、ブレオマイシンの併用療法がよく用いられます。また、II期、III期において、手術の前後に化学療法を併用し、腫瘍の縮小を図ってから手術を行うことも考えられます。
陰茎がんの1、2期の5年生存率は90%、3期では30%です。4期では、予後は大変厳しいといわざるを得ません。ただし、これらの数値はたくさんの陰茎がんの患者さんの平均的な統計学的な数値であり、あくまでその傾向を示すもので個々の患者さんにあてはまるものではありません。
陰茎がんの発生場所のため、医師の診察を受けるのが遅れ、がんの早期発見の機会を逃して手遅れとなることが多いので、自覚症状があったらすぐに診察を受けることが大切です。