【別 名】…ベニバナ、ホンファ
概 要 ●薬膳の素材としても知られる紅花は、血液の流れを改善する活血化瘀作用があるため、瘀血(血行不良)による高血圧や狭心症、動脈硬化、脳梗塞などの心血管系の疾患をはじめ、月経痛や月経不順などの婦人病、打撲や外傷などにも用いられている植物生薬です。
伝統的薬能 日本への渡来も古く、飛鳥時代に染色の技術とともに伝えられたといわれており、古くから東北地方を中心に栽培されてきました。
聖徳太子は、女性の最高位を表す色として「紅」を指定しています。
季語は夏で、別名「くれない」とも呼ばれ、『万葉集』にも「くれなみに衣染めまく欲しけども著くにほはばや人の知るべき」という柿本人麻呂の歌が残されています。
また、「末摘花」の異名もあり、『源氏物語』に登場する赤い鼻の常陸宮の娘・末摘花も、紅花に由来しています。
観賞用の切花としても活用される紅花は、夏に鮮やかな紅黄色のアザミに似た頭花をつけます。咲き始めは黄色で、しだいに紅色に変わっていくのが特徴です。薬用に用いられるのは、花冠を乾燥したものですが、黄色から紅色へ変わりかけた頃に採集されたものが使われています。
花冠は、日本古来の貝殻に塗りつけた口紅(京紅)や、染料の素材としても用いられてきました。染料に使用された歴史は古く、紀元前2500年のエジプトのミイラの着衣に、紅花から作った赤い染料が発見されています。
花から染料の紅を作るには、夜露の残る早朝に手摘みしてから水洗いし、蒸籠で蒸した後に水をかけ、板餅状に圧搾して乾燥させます。これが紅色の染料の原料になります。
葉はサラダなどの食用に使われ、種子は油料に用いられます。紅花油は、血管コレステロールの沈着の予防に効く油として知られています。また、紅花の主産地として名高い山形県では、紅花を蕎麦に煉りこんだ紅花蕎麦も食されています。
中国では、文房四宝の一つである墨に、紅花油を燃やして作る煤をニカワと一緒に煉って作った良質の「紅花墨」があります。
少量の紅花を食用にすると養血美肌作用があるので、中国では、薬膳にもよく使われています。シチューやスープ、豚肉や鶏肉の妙め物などに活用できますが、紅花は長く火を通すと苦みが出るので、他の食材に火が通り、調味料も加えて味を調えてから最後に加えるようにしましよう。紅花は、漢方薬局や中華素材を扱うスーパーなどで入手できます。
【基原(素材)】…キク科ベニバナの花弁。
※中医学の薬性理論の大きな柱となるのが次に掲げる「性・味・帰経」で、いずれも生薬の効能効果と関連があります。
【温寒】… 温 ※性:生薬はその性質によって大きく「寒・涼・平・熱・温」に分かれます。例えぱ、患者の熱を抑える作用のある生薬の性は寒(涼)性であり、冷えの症状を改善する生薬の性は熱(温)性です。寒性、涼性の生薬は体を冷やし、消炎・鎮静作用があり、熱性、温性の生薬は体を温め、興奮作用があります。
【帰経】…心・・ ※帰経とは生薬が体のどの部位(臓腑経絡)に作用するかを示すものです。
【薬味】…辛 まず肺に入ります。 ※味とは薬の味のことで「酸・苦・甘・辛・鹸」の5種類に分かれます。この5つの味は内臓とも関連があり、次のような性質があります。 「酸」(酸味)=収縮・固渋作用があり、肝に作用する。 「苦」(苦味)=熱をとって固める作用があり、心に作用する。 「甘」(甘味)=緊張緩和・滋養強壮作用があり、脾に作用する。 「辛」(辛味)=体を温め、発散作用があり、肺に作用する。 「鹸」(塩味)=しこりを和らげる軟化作用があり、腎に作用する。
【薬効】…月経調整作用 活血作用 鎮痛作用 化瘀作用
【用 途】…活血化瘀、通経。少量で使う場合は養血作用もある。
【学 名】…Carthamus tinctorius L. |